第1回:小栗 幹一さん / 日本DMC株式会社 代表取締役 UAV CENTER (無人航空機操縦技能養成センター)講師

ドローン産業の育成と社会貢献事業の両立

よりよいサービスを追求した先にドローンとの出会いが

――小栗さんの名前はドローンの現場でしばしば話題になります。それでもこれまでずっとドローンのお仕事をしてきたわけではないのですよね?

小栗 幹一さん( 日本DMC株式会社 代表取締役 UAV CENTER (無人航空機操縦技能養成センター)講師)

私は、総合建設コンサルタントで測量設計業の企画営業を担当しておりました。2011年3月11日に福島県を襲った東日本大震災の影響で津波に流された地域の復旧支援に携わる機会があり、広大な土地に建物の基礎しか残っていないような現場を地上測量した事を覚えています。そんな経験から航空写真測量という技術をドローンに置き換えたサービスをしたいと思い空間情報技術のコンサルタントとして日本DMCを設立したことがドローンと係わるきっかけになりました。

――ドローンと関わるようになり、ご自身にとってどのような位置づけなのでしょうか?

そうですね、ドローンが私の運命を変えた、じゃないですが、凄く大切な存在です。はじめは、ドローンについて全くのド素人。やはりドローン業界の専門家との接点をもち勉強しなければいけないですよね。そこで調べていたところJUIDAを知り、いち早く入会しました。
ドローンを活用したモニタリング事業を主軸にしていますが、はじめは、仕事がなく大変でした。顧客からは、ドローンの飛行に関する安全性への懸念や事例がないという点で否定され、なかなか受注に繋がらない日々が続き厳しい時を経験しています。

これらの経験もあり、会社の宣伝で申し訳ありませんが、今では、ドローンを活用した計測だけではなく、さらにドローンにより空から計測できなかった欠測部分を可搬ライダー(人間が背負うタイプ)のレーザ計測器などで地上データの計測もしています。さらにデータの処理、編集、応用のサービスも行っています。

提供:JAXA 先端空間情報技術試験フィールドにて

また、私自身もドローンのパイロットとして担当しています。
2020年は、御殿場市と連携している先端空間情報技術評価支援センターの試験フィールドでJAXAが開発を進めている静粛プロペラ(Looprop)の初飛行デモのパイロットも担当しました。JAXAの安全について勉強になったのはS&MA(Safety and Mission Assurance)安全に対しての信頼性まで要求されるという事です。この業務では、飛行計画作成に伴いJUIDAで学んだ無人航空機操縦技能者や安全運航管理者の知識がとても役に立ちました。また、JUIDAに所属する専門家の人との出会いが、業務に携わる上で自分の成長に大きく影響したと実感しています。なので、今までもこれからも、私にとってドローンは重要な位置づけです。

社会に貢献したいという思いがドローンで実現

――ビジネス領域や生活スタイルも、自分がやりたいものに近くなっていったのでしょうか?

そうですね、社会貢献をする仕事をやりたいという気持ちがありますが、今は地元をはじめとしてドローンという産業を育てていくことに仕事を通して携われています。やっぱり企業や行政関係の課題解決にむけた役に立てればと考えております。

――そういったお仕事を通じてやりがいを感じた瞬間はありますか?

以前、台風の影響で河川が氾濫し、川に流された人の捜索を経験したことがありました。二十数キロもの川の映像をドローンに搭載されたカメラで撮影。事務所に戻り、PCモニタで拡大しながら、夜な夜なそれらしいものを探すということをしました。そのとき、ドローンの経験が人の役に立っているって思えたことでやりがいを感じました。
あとは、森林施業のスマート化でしょうか。ベテラン(高齢者)が大変な作業に従事しているところが多く、未だ担い手不足と聞いています。でも最近のスマート林業は、ドローンが活躍しているので、大変な仕事は軽減され、私もその課題解決に携わることができています。このことがやりがいになり、この技術が実用化、スタンダードになれば達成感は大きいですかね。

――ドローンの扱いを身につけるためのプロセスは?

趣味として、8年くらい前からラジコンでなくドローンを購入し、利用をはじめました。はじめに購入した機体は性能が悪く今と比較できないぐらい操縦技術と知識が必要でした。自分自身も素人なので、広いところで訓練をして経験を積んできましたが、プロを目指す上で非効率なので、講習をしている企業を探して福岡県まで受講しに行きました。その後はもちろんJUIDA認定スクールを運営するため、講師になる事を目指して日々、勉強をしてきました。

――小栗さんの今後の抱負、教えてください

空間情報技術といってもわかり辛いと思いますが、空間の三次元形状を点群データにする計測と情報の処理やデータを応用する事が私の仕事なるので、これからもレーザやカメラ、特殊なセンサをドローンや自転車に搭載したり、背負い歩いたりして計測していきます。そして、サンプリングした情報を編集、応用して社会の課題解決の手段の一つとして利用できるようにしていきたいと思っています。
以前、会社の業務ですが、ドローンを活用した森林計測業務を富士市役所より2ヵ年に分けて受注した実績があります。ドローンで取得した三次元点群データが保有する情報を使用して市営林間伐前のバイオマス量を積算する作業です。そういった実績を活かしていきながら、大きくはカーボンニュートラルに向けた情報取得の技術としてスマート林業に携わり確立させる取り組みに役立ちたいと思っています。

――産業振興にも社会課題解決にもつながる取組だと感じます。発注者と受注者とのやりとりもスムーズになりそうです

そうですね、森林計測業務は大手航測業界が飛行機で計測してきました。その時に使用されている業務仕様に記された内容が雛形になるかと思いますが、ドローンに入れ替わり、一斉にスマート林業の取組が地域ごとにはじまっていますが、違いはあるものの、統一されると更にスムーズになると思います。但し、技術的には地域ごとの森林環境は違いますので、試行錯誤しないとなりませんね。

――一方で、ドローンを始めたからこそ見えてきた課題のようなものはありますか?

無線通信について特に課題を感じています。ドローンは位置情報の取得や操作に無線通信を使用していますが、ドローンが頻繁に飛行する環境は想定していない為、ドローンだけではなくその他の機器に通信障害が起こってはいけません。今後、目視外飛行で広域なエリアのモニタリング、物流などのサービスが期待されていますが、安全に利用できる環境を担保するにはいろんな課題を感じています。例えば、自動運転で使用されるモビリティ全般、地上固定アンテナや通信機器全体など、相互の電波が、それぞれどう影響があるかなど整理した情報があれば安全な運用に繋がると感じています。

なぜドローンを飛ばすのか?目的意識を持つことが大切

――小栗さんのようなパイロットになりたいと思っている人たちに向けて、アドバイスをいただけますでしょうか

私は仕事に活かすことを目的としてドローン活用を考えています。また、商品や生産性、技術を高めるツールとしてドローンをどう活用するかを考え使用しています。私たちは、調査や測量が仕事なので技術的なノウハウもあり成果に付加価値を与え、通常よりも作業量を減らしてコストも抑えることができ大きなメリットに繋がり顧客の高評価になりました。なので、いろいろ活かせる事例はたくさんあると思いますが、目的を見つけて使用する事が大切だと思います。
目的は飛行するときも重要です。私が使用するときは必ず目的があり、目的外の利用はありません。その為、飛行して得られる成果と、危険が事前に想定できます。
無人航空機の飛行禁止に係わる許可承諾を申請する場合も当然、計画があり飛行できる環境が整います。
その他、趣味で飛行させるため、計画や安全に対しての意識が欠落した状態で撮影する場合は危険がかなり隠れています。
私も、過去に動作確認中、ヒヤリハットの経験があり、危なく事故に繋がるところでした。
なので、計画なき飛行はリスクが高いことを知って欲しいです。

――最後に、ドローン産業に注文することがあれば聞かせてください

ドローン産業に関しては、やっぱり国内のドローンメーカーに技術開発を頑張って欲しいです。操作の使いやすさや、機体は飛行時間、防水、防塵など安全に係わる注文はたくさんあります。ですが、技術開発は大変な事も知っていますので利用側の私たちが日本の企業へ、開発に役立つ情報をフィードバックするように心がけたいです。

—ありがとうございました

<インタビュー/村山繁>


小栗 幹一(おぐり まさかず)

日本DMC株式会社 代表取締役
関連資格:
JUIDA認定ドローンスクール講師・JUIDA認定無人航空機安全運航管理者
JUIDA認定無人航空機操縦技能者・第一級陸上特殊無線技士
その他の所属団体:
一般社団法人先端空間技術評価支援センター 理事
一般社団法人静岡県無人機安全協会 理事
 
職歴:
総合建設コンサルタント 24年勤務
2015年2月~現在 日本DMC株式会社
事業概要:
センサ搭載型ドローンを活用したモニタリングサービス・三次元点群データの解析・編集サービス・JUIDA認定ドローンスクール
担当業務実績:
官公庁、JAXA、農研機構、電力企業、大手航測会社、プラント、大学等 多岐にわたる。