第4回:矢口康平さん/双葉電子工業株式会社 双葉電子双葉ドローンスクール講師

操縦技能よりインシデントの考え方を

産業用ドローンは、何が一番必要かを考えて作る

――Futabaの矢口康平さんと言えば、模型飛行機競技の日本選手権に出場するなど凄腕パイロットとしてお名前があがります。

双葉電子工業株式会社(千葉県茂原市)というとホビーラジコン系の送信機や受信機などを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、私の所属部門では産業用向けの送信機やリモコンなどを作っています。中でも産業用ドローンは、どういったドローンが一番必要かを考えて作っています。最近では災害対策を意識したドローンを作りました。取引先の方が来られた時には、デモフライトも行います。JUIDAからの連絡を受けて、災害現場の支援に出かけたりもしました。実証実験も日々、行っています。1日2キロ程度、風速、風向などの飛行条件を確認したうえで、工場の上をぐるぐる飛ばしています。飛行距離や飛行時間をはかったり、バッテリーの着脱を繰り返したりということをしています。オペレーターの判断のもと、雨などの悪天候でも飛ばしています。耐久試験も行っています。

――実験的な飛ばし方もされているのですね。

はい。一定の基準の限界テストをやっています。わざとアスファルトの上に着陸させたり。その様子を解析したり。ドローン自体は我々の長生工場の中で内製しておりますが、世の中に出すためにはちゃんとしたものを作らなければならないので、何が起こるか、何が必要か、などを総合的に検討します。なによりも安心・安全を重視したドローンを展開したいと思っています。

――農薬散布や送電線延線遺跡調査など、様々な事業に参画されてます。

送電線でいえば、無人ヘリで、電線を延線するためのケプラー線などの細い母線をはっていました。

生徒が操縦に集中している横から問いかける理由

――活躍の幅が広いですね。そういった豊富なご経験がスクールで人材を育成するところにも生かされることになりそうです。

われわれのスクールは、安全・安心を理念に掲げています。講師陣は、多種多様な機種を取り扱い、何千時間と飛ばしてきましたので、だいぶノウハウがあります。いかに危険を察知して、インシデントを回避するかということにつながっています。経験があるので当然、操縦の技術も長けているところはあるとは思いますが、なによりも違うと思っているのは、インシデントの考え方であると思っています。

――インシデントの考え方、ですか?

はい。受講生の皆さまに最初にお教えすることのひとつが、インシデントの考え方です。ドローンは浮いていますから、何かが起こった時には墜落させる判断をしないといけないことがあります。そこを重点的に、毎回伝えます。生徒がプロポを持っているときでも、『こういう時どうしますか?』『ああいう時どうしますか?』と、声に出すようにしています。

――それは、どう判断するかを聞いているということですか?

そうです。『どう判断しますか?』です。例えばGPSが切れたらどうしますか?という具合です。操縦に集中してもらいながら質問にも答えてもらう。生徒さんにとっては大変かもしれません。卒業していただくためには、インシデントの考え方を身に着けていただかないといけないので、一番集中しているときに言葉を投げて刷り込むことを心掛けています。

――刷り込まれるといざというときに使えるということは、多くの方が経験しておられるかもしれません。

空の活用促進でひとつの産業が生まれた

――ところで矢口さんとドローンの関係はいつからですか?

もともと、空を飛ぶものが好きでした。20歳か、少しそのあとか、ラジコンを始めたのが入口です。ドローンはそのあとです。ラジコンはおもしろいですよ。自分が制御しないと飛んでくれないというところがおもしろさの一つです。特に無人ヘリは、動く理屈をきちんとたたきこんでおけば、ほかのマルチコプターやドローンはより簡単に感じると思います。

――2015年あたりから急速に、ドローンやエアモビリティなどを含めて空を活用する動きが活発化しています。

一つの産業が生まれたと私は思っています。地上から150m以下の所に、活用できる空間ができたことは、空撮も含めて新たな産業だと思います。現時点ではレベル4の解禁が到達点ですが、その解禁で空飛ぶスタイルが変わって来ると思っています。法整備について国など関係機関にも意見を伝えて参りました。

――ドローンに携わっていて楽しかったのはどういう時でしょうか。

ドローンスクールでは、お越しいただいた未経験の生徒さんに、カリキュラムをこなしていただいて、ちゃんと卒業していただけたときはとても嬉しいです。ドローンづくりでは、こう作るとこう飛ぶのか、など発見があるところが魅力です。

――レベル4の解禁はドローンを含めた空の使い方にとって大きな節目になるとみられています。矢口さんはどう展望しておられますか?

空撮業務から物流事業、など幅広くあると思っています。ただ、解禁されたらすぐに都心の上空をドローンがたくさん飛ぶ、ということにはならないと思います。おそらくさまざまな事業がビジネスとしてただちに成立するものでもなくて、別の工夫が必要だと思っています。多くの企業や事業者などが方向性を模索しておられますので、それぞれの専門的な立場から新しい視点を持ち寄って、その強みがいかされればそれがビジネスチャンスにつながると思います。

最重要はインシデントの考え方。操縦技術は二の次

――これから空をフィールドとして使うにあたって考えておくべき課題は?

すでに多くの台数の機体が登録されています。まだ登録されていない機体も沢山あり、今後も登録されると思います。レベル4解禁で気になるのは法令遵守です。一番の課題とも思います。スクールでは、安心・安全と共に法令遵守を理念として活動していますが、そこをどう担保するか。解禁されてからもずっと法令が遵守される環境づくりに、ドローンの運用者も民間事業者も国も行政も取り組む必要があると思います。

――これから空のマーケットが広がるにあたって、このフィ-ルドで活躍したいと考えている方もおられると思います。現場で幅広い活躍をしておられ、スクールでも人材育成にあたっておられる矢口さんのようになりたいと思う未来のパイロットに、アドバイスをお願いします。

繰り返しになりますが、安心・安全・法令順守。これは胸に刻んでほしいです。お仕事に従事されるようになると、恐らくインシデントに直面することになると思います。そのときにどう判断すればいいか。ぜひそれを身につけておいてほしいです。

――腕のあるパイロット、オペレーターほど、インシデント対応の重要性をお話される気がします。矢口さんもそうですね。

そうだと思います。安心・安全は活躍しておられる方ほど大切にしていると思います。インシデントに関する考え方が最重要。操縦技術は二の次だと私は思っています。

――ありがとうございました。『安心・安全・法令遵守』の重要性を熟知したパイロットが、レベル4の解禁された日本の空を守りながら利便性を追求する近未来を楽しみにしたいと思います。

<インタビュー/村山繁>


双葉電子工業株式会社 

矢口 康平 (やぐち こうへい)

ドローンソリューション事業に従事しており、NEDO案件他、国家プロジェクト等にメインオペレータとして参画
農薬散布、送電線延線、遺跡調査、離島間物流、橋梁点検他実績あり
趣味のラジコンでは、主に固定翼の曲技大会に出場
安心・安全・法遵守を徹底している。