第3回:田口 厚さん/ 株式会社Dron é motion 代表取締役 / ドローングラファ

ドローンで地方を元気にする

まだ気づかれていない魅力をドローンで引き出す

―― 田口さんの仕事と、これまで何をされてきたかをご紹介ください。

私たちは、ドローンで地方を元気にする取り組みを展開しております。地方の自治体や観光業界のみなさんと一緒に、動画コンテンツを活用した集客やソリューションの企画、そういったものを実際に担ってくれる人材の育成、そしてその方たちが活躍できる場として観光を切り口にした集客イベントの実行と、この3本柱を業務として取り組んでおります。 なので、ドローンで空撮というジャンルには入るんですけど、撮影が目的ではなくて、撮影したコンテンツを使って、いろいろな人に地域に足を運んでもらったり、地域の新しい魅力を発掘したり、そういったことができる仕掛け作りが事業の本質です。

――具体的には?

メジャーな観光地であれば誰もが思いつく絶景があると思うのですが、実はそうでない場所でもドローンで切り取ることによって魅力が2倍、3倍、4倍増になる絶景地がいろいろ隠れているんです。そういったところを探し当てていって、まだ知らない人達に向けて発信をしています。

――これまで取り組んだ地方とは?

静岡県では、県とインフルエンサーの方と一緒に、まだまだ隠れた魅力ある県内の場所で、撮る楽しみだけではなく発信して人に伝えてみよう!といった撮影会イベントをさせていただきました。また、切り口を変えると、ドローンを飛ばしたいけど飛ばせない人たちって結構いらっしゃいます。そういった方向けに、ライセンスは取ったけど許可取りが難しいとか、あそこの許可がなかなか下りないよねってところをこちらで調整をして、一緒に撮影をしたりしますね。 また、そこで講師としてレクチャーをさせていただいて、いつもと違うレベルで空撮をするにはといった視点で、実地訓練的なことを組み入れた空撮ツアーも開催しました。埼玉県の秩父や岡山県では備中松山城でもやらせていただきましたね。

山中城跡(静岡県)

――城好きなんですよね?

そうなんですよね。ドローンを始めたきっかけの一つがお城っていうのもあったので、ある意味、半分はライフワークみたいなものですね。

――もともと田口さんはドローンこの道50年とか、そう言う人ではないですもんね。

全然違いますね。それこそ6年くらいでしょうか。きっかけはもともとフリーランスでWEB制作やコンサルをやっていたんですよ。中小企業を対象にWEBサイトを使った集客のお手伝いです。SNSが出てきた頃だったのでSNSを活用しましょう、動画もWEBで見られるようになってきた頃だったので、動画も活用しましょうといった感じでした。動画もただビデオカメラで撮ってもなかなか差別化がしにくいので、ドローンが使えるんじゃない?みたいなところからドローンに興味を持ちだして。WEBサイトの延長でドローンの撮影も始めました。

――ドローンを使ってみて、それまでの世界と比べると変化はありましたか?

いろんな意味で変わったと思います。一つには自社が提供しているサービスが変わりました。いまだに覚えているのですが、最初に相談を受けたのが、西洋風の凱旋門的なモニュメントがあるバラ園が似合うような、おしゃれな霊園でした。パンフレットだと平面的なので、広さや空間の良さを伝えるためにドローンが使えないかと相談を受けました。季節によって桜、チューリップ、バラ…と見える景色が変わるので、その良さを年間を通して伝えていきたいという話から、同じ場所でも四季を通して変化する景色をドローンで撮るといった、サービスの一つの軸ができました。その意味でサービスは変わりましたね。
また、もう一つの変化としては、仲間が増えたことが挙げられます。ドローンは未開の分野なので、一緒になんかやっていこうという人たちが、いろんなレイヤーで増えました。僕の受講生や、僕がやり始めた頃に一緒に練習していた人たちと知り合えたのも、やっぱりドローンがきっかけですので。いろんな方と繋がりが持てて、日々一緒に切磋琢磨させていただいています。

吹屋ふるさと村(岡山県)
吹屋ふるさと村(岡山県)

――関わる人が増えたことで、そこから仕事が広がるのですね。霊園の場合は面白い相談でしたね。

そうですね、本当にたまたまって感じでしたが。でも思うのがドローンって結構先端的な技術でもあるじゃないですか。なので、そこに興味を持つ人たちって何かしら自分で努力をされている方が多いんじゃないかと思っています。最近、受講生のプロジェクトを手伝うことが多いのですが、彼らはドローンを使って自分のやりたいことをやっていこうとしている人たちなので、何かを成し遂げるために努力をしているんですよね。そういった点で、共通項としてのドローンがあると、仲間として、とても共感を持ちやすい。それを中心にしたコミュニケーションやきっかけを作りやすいのではないかという気がします。

――ドローンをやっている人って野心を持っている人が多いですよね。ドローンをやるために会社を辞めたりとか。

そうなんですよね。受講生に多いのが、結構安定した会社を辞めてドローンベンチャーや、中小企業などに飛び込んでいく人たちなんです。 銚子市でよく撮影のイベントをやらせていただくのですが、そこに卒業生も一緒に来てくれるんです。最後に犬吠埼の先端にある温泉にみんなで入って帰るんですけど、その温泉で、だいたい人生相談が始まるんですよ。しかもそこで相談をした人たちが、どんどん会社を辞めていく。一時期そういうのが多くて怖くなったりもしたんですが、旅立ちたくなっちゃうんでしょうね。ドローンの魅力として、やりたいことをやりたくなっちゃうというか。

地元の人じゃないからこそ、引き出せる魅力で地元の人を驚かせる

――地方創生・活性化のために、まだドローンで取り組む余地はあるんでしょうか?

一つ重要に感じているものとして、「受け入れてくれるかどうか」があります。観光にドローンを活用しようと興味を持たれている自治体の中に、受け入れてくれる人がいれば早いんですけど、そうじゃないところが結構あります。どうしても今、物流や点検といった「これがあったら本当に生活が便利になる。」といったマストに近い部分が優先されると思っています。そこと比べて、観光として地域の魅力を発信するのはプラスアルファだと思われている部分もありますので、実験などをしながら重要性を高めて、そこから観光に使えるかも…といった、ステップを踏むのが重要だと思います。 実際に、提案するときには段取りを踏んでいます。観光ってマストではないこともあるので、場所によっては邪魔者扱いされる部分もあります。まずはマストの部分でいろいろドローンのことを知っていただき、身近に感じ、安全性も感じ、そこから地域の魅力と観光のポテンシャルを知っていただけると、観光でドローンを活用するところに行くのではないかと思います。

――いきなり進めようとせずステップを踏むって、とても大切ですよね。

大切ですね。地域の方だと当たり前すぎて、自分達の地域の魅力に気づかないんですけど、僕らが行くことによって、「ここ、こんなにすごいじゃん!」ってことは結構あるんです。それを活用した観光の仕組みを、いきなりやろうぜ!って持っていくと、拒否反応が出ることがあるんですよね。僕らは最終的な形もある程度見えているけど、地域の方には伝わらないので、途中のステップをちょっとずつ見せながら、受け入れられるように進める。そこは難しいけど大切なところだと思っています。

原山 円形茶畑(京都府)

――普段生活している人からすると、上空数十メートルの高さからものを見たことはないから、実は面白い地形があるとか、魅力的な見せ方ができるなどはいきなり想像できないですもんね。

そうなんです。自治体あるあるなんですけど、おすすめポイントを案内してもらうんですね。その中で必ずあるのが高台の上なんです。景色がいい。でも、そこはドローンを飛ばしてもそんなに景色が変わらないんですよね。

――そもそも最初から高台ですもんね。

そう、変わらないんですよ。そんな時に僕がいつもやるのが、最後の最後に「もう一個だけどこかないですかね?」って聞くことなんです。そうして出てくるのが、地元の方にとっては、無理やり引っ張り出した、なんでもないと思っている場所。そこがドローン的には超絶景だったりするんですよ。このパターンは結構多いです。 地元の方は、ドローンを活用した観光や、絶景を切り取ることに関しては、ノウハウはないはずなので、そこを引き出すお手伝いができたら面白いなぁって思っています。

――ドローンをやっていて充実しているとか、楽しいと感じる時は?

白髭の滝(北海道)
白髭の滝(北海道)

社名の由来にもなっているのですが、僕、地元の方が驚く瞬間が一番大好きなんですよ。例えば空撮に行った時には外付けのモニタを一緒に持って行って、地元に何十年も住んでいる方と、飛ばしている瞬間の映像を一緒に共有するんですね。その時に、「え~!」とか「こんなだっけ?」って話をされるんですよ。それが最高の瞬間なんです。多分その瞬間に彼らが目にしているものが、まだ誰も気づけてない地域の魅力だったりするので。だから『Dron é motion』に関しては、ドローンとエモーション。エモーションは提案という意味と感動という意味も含まれていて、ドローンで感動を提案するという意味を込めて、『Dron é motion』と名前をつけました。

――確かに感動されると嬉しいですよね。

嬉しいですね。地元の方がっていうのがいいですよね。バズるようなコンテンツが作れたとして、そこに人が来たとしても、宿泊施設がないって結構あるんです。それを無視していきなりメガヒットなバズり方をしたとしても、多分ご迷惑になってしまうだけなので、地元の方のニーズをちゃんとお話ししながら拾っていくことを大事にしています。 また、ドローンのいいところは、混雑の山を作ることじゃなくて平均化できるところだと思っています。やっぱり観光客がいらっしゃると、ドローンって飛ばしにくいんですね。ドローンを飛ばすのであれば平日や、観光の谷間を狙った方がドローンのパイロット側も楽しいんですね。そういった所にドローンパイロット、ドローンが趣味の人達、旅好きでドローンをする人達を呼び込むことによって、混雑の山をなだらかにしたい。そういった観光施策もできるのかなと思っています。やっぱり無理をさせないで、お互いがwin-winになれるような仕掛けづくりが重要ですよね。

――ドローンの人になってから見えてきた課題、ドローンを使うことによる課題などはありますか?

研修風景

自分がやっていて限界を感じているのが、恒常化ですね。例えばこの間も石川県の先端の珠洲市で、2か月位、空撮コンテストをやったんですよ。コンテスト対象はその期間中に撮影した映像なんですが、珠洲市までどうしたら多くの方にお越しいただけるか、いろいろと話し合いました。 空撮できる絶景地を14箇所開放してもらって、フリーパスで撮れる仕組みで空撮コンテストをやったのですが、2カ月という期間限定のイベントで、全国津々浦々から100組弱の方に来ていただけました。問題はその後ですよね。花火を1回打ち上げたけど、そこから「ドローンが飛ばせる場所」という認知を広げて、常に観光の隙間に来てもらえるような仕掛けが作れるかどうか。今の所、イベント後は落ち着いているのですが、日常的にそういった流れが作れたら、観光視点ではドローンの意味が出てくるんじゃないかと思っています。 どうしても、メインの観光施策ではなく隙間を埋めるということなので、なかなか難しく、限界があると思っています。その仕組み作りの必要性を感じています。

――仕組みづくりですね。珠洲市の時は確か「あの田口さんがやってくる!」と、かなりフィーチャーされていました。

とんでもない!あれを仕掛けてくれたのもJUIDAの卒業生なんですよ。東京駅前で初めてドローンスクールの講師をさせてもらった時に、石川からスクールに通ってくれていたらしいんですね。ドローンの空撮コンテストをやりたいと地元の企業から打診があった時に、いろいろと僕を引っぱりあげてくれて。審査員として行ったんですけど、実は企画の初期段階から顔は出していたんです。

楽しさを原動力に、「安全」と「信頼」築き上げる

――これからドローンを始めようと思う人に、ドローンのいいところを教えてください。

やっぱり、今までとは全く違う仕掛け、仕組みが作れるところだと思いますね。いままでやりたいけどできなかったことや、まったく新しい視点のものができるツールじゃないかと、僕は思っています。

――テレビ番組でも空撮などされていますが、ああいうお仕事もドローンをやっていると誰にでもできるようになるんでしょうか?

卒業生を見ていて思うのですが、ドローンを始めるってやっぱり他と違うことだとは思うんですよ。それだけで差別化というのはできると思うんですけど、その先ですよね。ドローンを使って何ができるかを明確に打ち出し、突き詰めることができているかどうかだと思うんです。 テレビの件はプロデューサーの方に「なぜ連絡をくれたのか?」を聞いてみたんですね。その大きな理由が「自治体と仕事をしているから」なんです。自治体の仕事は、事故があったら次からはなくなってしまうので、安全管理を徹底してやっています。自治体とちゃんと仕事がやれている、それを見ていただいた上で声がかかった。 すると今度は、テレビをやっているからという理由で自治体からも声がかかるようになりました。テレビも自治体と一緒で、事故があると番組が飛んでしまう。長くテレビをやっているということは、安全管理をちゃんとやっているんですねって。そういった意味で相乗効果はありますね。

鶴の舞橋(青森県)

――田口さんの場合は自治体とやっていることが一つ信頼の証明になったんでしょうね。

信頼という意味では安全管理というのはJUIDAの部分でも重要だと思います。私たちは現場をガンガンやりながら、講師もやっているんですが、講師オンリーの所も多いですよね。何人か他の人にも聞くと、現場で何かがあると、スクール自体もダメになってしまうことがあるので、現場はやめたところもあるようです。私たちは逆にそれを敢えてやっているところがあって、やっぱりアップデートをしないと、教えることってできないと思っています。そういう意味で現場は絶対必要だと思っています。安全管理の徹底によって大きな事故もなく、現場も回しつつ、現場で得たものをスクールの中でフィードバックする仕組みを作ろうと、こだわってやっています。最近、軸はやっぱり教育だと思っているので、撮影ももちろんやらせてもらいますが、それをどんどん教育にフィードバックして、そのサイクルの中でやっていけたらと思っています。

――これからドローンをやりたい人、田口さんのようになりたいと思っている人に助言をお願いします。

僕の中では1個しかなくて「楽しめ!」ってことです、本当に。ドローンは趣味から始めた部分もありますが、そこからめちゃめちゃ楽しんだんですよ。楽しむ中で、仕事に使える部分があるかな、こういった使い方あるかなとか、色んなヒントや思いつきが出てくるので、それを楽しみながら試すのがいいと思います。ドローンの仕事をやっていて、つらいなあって思ったことが1回もないんですよ。こんな会社をやっているのでまともな休日とかよくわからないんですけど、それが嫌だなぁと感じたことは一切ないんですね。そこが多分起点なので、まずは楽しんで、楽しみの中で、ヒントをどんどん吸収して、アイデアを膨らませて、更に試すのがいいと思っています。所詮人間は、知っていることしか知らないので、見たことがないものを見せる仕事をしようとすると、やっぱり楽しんで色々試して繰り返していって欲しいですね。

<インタビュー/村山繁>


田口 厚(たぐち あつし)

株式会社Dron é motion  代表取締役 / ドローングラファ

1998年〜IT教育関連NPOの立上げに参画し、年間60以上の小学校現場における「総合的な学習」の創造的な学習支援や美術館・科学館等にてワークショップを開催。その後Web制作会社勤務を経て中小企業のWeb制作・コンサルティングを主事業に独立。
その後、2016年5月〜現在では「ドローン×地方創生」をテーマに観光集客の向上を目的とした空撮動画制作を行う株式会社Dron é motion(ドローンエモーション)設立。各地自治体や観光地のPR動画コンテンツ制作の傍ら、JUIDA認定ドローンスクール講師等として600名以上の卒業生を輩出し、企業研修、eラーニング等の講師としても活動。また、ドローン専門メディア「DRONE.jp」等のメディアでレポートや執筆活動もしている。